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仙台高等裁判所 昭和24年(ツ)14号 判決 1951年2月12日

上告人 控訴人(附帯被控訴人)・原告 高橋久治

被上告人 被控訴人(附帯控訴人)・被告 鷹觜金次郎

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

本件上告理由は末尾添付「理由書」記載のとおりである。

按ずるに本件無尽は玄米を以て掛込む所謂米無尽で、毎年一回十二月中に会を開いて落札者をきめることになつていたが、昭和十六年からは法令により米の授受が自由にできなくなつたため、同年十二月に開かれた無尽会の際講員間の話合で同年度から米の代りにこれを公定価格に換算した金銭で授受することに改め、爾来この方法で継続してきたこと、以上の事実は当事者間に争のないところとして原審の確定したところである。本件の争点は右換算の規準を当該年度産米の生産者価格とすべきか、それとも地主の収得し得る所謂地主価格とすべきかの点にあるのであるが、元来米無尽の満会前に米の授受が自由にできなくなつたため、米の代りにその価格に相当する金銭を授受することに改めた場合に、その価格をどんな規準によつてきめるのが最も合理的であるかについては、色々議論の存し得るところであろうけれども、この点につき予め講規約に定めのある場合は格別、さもない限り、結局は講員の意思によつて決する外はないものというべきである。原判決の認定によれば、昭和十六年十二月初頃開かれた無尽会の際、上告人を含む未取者全員及び既取者の大多数出席の上、同年度以降は当該年度の小作人から地主に納める小作米価格(地主の収得すべき価格)によつて換算した金銭を授受することに全講員異議なく申合せ、爾来この申合せに従つて米の代りにその換価金が授受されてきたというのであつて、原判決引用の証拠資料によると右のような事実も認め得られなくはない。

縷説の所論は要するに原審が適法に行つた証拠の取捨判断、事実の認定を批難するに帰するもので採用できない。

よつて本件上告を理由なしとし、民事訴訟法第四百一条、第九十五条、第八十九条に則り主文のとおり判決する。

(裁判長判事 谷本仙一郎 判事 村木達夫 判事 猪狩真泰)

上告理由書

一、訴外谷口善治郎は大正十二年二月中玄米四斗入壱百八俵堂無尽六俵掛を発企したるところ、上告人及被上告人各一口加入し、昭和五年被上告人該無尽諍取りたる爲、上告人に於いて正米六俵也を掛貸し、昭和二十年度諍取りたるに米は食糧管理法に依り米の受授不可能になり其年度の生産米の換価金にて受取るべきところ、該年度の米の公定価格未定のため、後日精算することにして一部の支払を受け、其後昭和二十一年三月三日の官報に昭和二十年度産米の公定価格発表になりたるを以て此の公定価格にて請求したるに既諍取者等は共謀して昭和十六年度において地主価格(小作料)を以て支払うことに決めたと申して上告人の請求に応ぜず、且つ被上告人の申請したる証人等は全く虚偽の申立をなしたるを控訴裁判所において信用したるを以て敗訴となる。事実昭和十六年度において地主価格というものは生れていなかつたのである。無かつたのを決めるという不合理は絶対に無い者である。又若し有つたとして決めたならば、無尽帳に其の事の記載があるべきである。無いのを見れば全くの虚偽であることが明瞭である。

二、上告人の次回者諍取りの際即ち昭和二十一年度高橋マサノ及び谷口善治郎にも地主価格にて無理に押しつけようとして蔵元福原福司は昭和二十一年十二月二十九日自宅に講員を召集し会議したところ既諍取者等は小作料を以て支払うことを主張した。併し未取者等は田も畑も小作させたのではなく、正米の貸米故に小作料にて請取るべき筋合のものではなく、米の換価金即ち公定価格にて請取るべきものであると主張した。前述の如く昭和十六年度において決めたとしたら、ここに斯る会議が開かるべき理由がないのである。これも全く既諍取者等の共謀の虚偽である

三、上告人は斯る意味に於いて被上告人の偽証人に対し目下秋田地方検察庁大曲支部へ偽証罪として告訴し、証拠書類提出中である。

四、上告人の本件の価格は少ないけれども、未取者二名の外に家族中に未取りとして一名ある故に特に本件の審重なる御審議御判決を願う次第である。

本無尽発企の相互扶助の精神に戻り、既諍取者等の無暴極まる振舞に対し正当の御判決を御願い申す次第でございます。

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